2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

April 13, 2010

MBAなんて役に立たないと言われたら

「MBAなんて役に立たない」これもMBAを目指すことになってから、何度も何度も言われたことである。

そんなままごとをしている暇があったら、海外の会社で働くほうがよっぽどためになるとか、そもそもコンサル実務でやることと大差ない(新しいものはない)、とか、今更この歳で取っても無駄、とか、まあとにかく世間のMBAに対する物言いは手厳しい。

私自身繰り返しそんなことを言われ、自分にとってはMBAはとても魅力的なオプションであるにもかかわらず、他人からの問いに対してうまいカウンターパンチを持っていないことにフラストレーションを覚えた。それと同時に、その問いかけ自体に何とも言えない違和感を感じてもいた。そして、その違和感がどこから来るのか、受験が終わった今ようやくわかってきた気がしている。

それは、私は理屈じゃなくて行きたかった、ということである。キャリア上絶対必要だとか、そんな風には思わなかった。そうではなく、単純に楽しそうだから、自分にとって未知のものだから、刺激の多い人生を送りたいと思ったから、だから日本を出てMBAに行こうと思った。キャリア云々より、人生のこの時点での、生活全部ひっくるめての想いだった。もし仕事のためだけにMBAを志す人がいるとしたら、それはすごいことだと思うが、私はそうではなかった。

私にとっては、MBAでの生活はとても魅力的で、何より楽しそうだった。世界各国から、自分とは違う人生を送ってきた人が集まって来る場で、新しい経験ができると思った。そこで人間として成長できると思った。実際にMBAの2年間を過ごした卒業生にたくさん会って、学校も見に行って在校生と話して、その確信を強めた。

他の誰から何を言われようが、行くのは自分であって、何かを言う人たちには一切関係ない。人に必要だからって言われたらやるのか?人に止めろって言われるとやめるのか?投資対効果とか機会損失とか、それも人並みに考えたけど、あまり意味がないことに気付いた。2年間の大学院生活が、ビジネス上で(他の何かよりも)役に立つとか立たないとか、考えてもよくわからなかった。ただ、それでもMBAに行きたいという気持ちは消えなかった。自分が人生の中でどんな体験をしたいか、結局はそれだった。

身も蓋もない言い方であるが、結局のところ、MBAを持っていない人がMBAについて言及する場合、究極的には議論のしようがない、と今は思っている。 MBAは意味がないと言ってくる(たいていの)相手にはMBAの経験がないのだから、それがいかに役に立たないかを教えてくれることはない。一方で、これから目指そうとする受験生側は当然MBAがどんなものかまだ体験していないから、意義について正確に捉え切り返すことはできない。すなわち、双方ともMBAについての実体験を持たないのであるから、その人たちがいかにMBAの意味について考えたとしても、深みのある議論にはなりえない。

少なくともこれから学ぼうとする時点で、MBAは「私にとっては」意味があると思えている。この、私にとっては、というところが重要なのだと思う。それが真実かどうかは、これから2年間かけて確かめればいい。もしMBAが、私の想像と違ったものであったとしても、それは私の決断の結果であるのだから、後悔することはないと思う。でも、MBAに行かずに「やっぱり行きたかったなあ」と思って生きていくとしたら、それは私はものすごい後悔するだろうから。

だから、もしあなたがMBAを目指すことを既に決断していて、そんな居心地の悪い質問に出くわしたならば、その時は元気に、「自分にとっては意味があると考えたのです」と答えればよい。人がどう思おうが、一切関係ない。1千万円以上の大金を払うのも、2年間という時間を投資するのもあなた自身だ。決してあなたに「MBAなんて意味ない」と言ってくる人ではない。その人はあなたの人生に責任を取ってはくれない。自分の人生は、自分の信じるように生きてよいはずだ。

楽しいと思えるほうへ、心の底から思うとおりに。

No comments: