2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

November 25, 2010

リーダーシップの源泉

たまには授業の話。こちらではコミュニケーションの授業があり、クラスメイトの前でプレゼンをし、それがビデオに撮られて復習するという、なんか企業研修みたいなのをやってます。この歳になっていまさらそんなので駄目だしされたくないと思うんだけど、やっぱいろいろ自分が思った以上にできてないことを思い知らされます。これは英語云々の話ではなく、できてないです。日本のプレゼンテーションスタイルとは明らかに違うものがアメリカにはあります。のっけから観衆を掴むネタを投げ、アイコンタクトとジェスチャーをふんだんに使い、ステージを歩き回り、頭に残るメッセージを伝える。冷や汗の連続だけど、ここから学ぶことは本当に多い。

そつなく、誠実に仕事をするってのは今まで大切にしてやってきたことだけど、そこから飛び越えるためのヒントがこのプレゼンテーションのトレーニングに隠されているのではないかと感じています。1対1から1対1000まで、ビジネスも生活もコミュニケーションの連続であるわけで、リーダーシップとかいうわけわかんないものも、ともかくも力強いコミュニケーションに裏付けられるものであろうということはわかってきた。仕事はきっちりでしゃばらず、ではなく、そこから更に一つ前に進める行動を加えるとすると、それがプレゼンテーション。クライアントとの会話も上司報告も、要は全部プレゼンテーション。エネルギーレベルを高く、それをうまく伝えるのはほんと重要。

先日、Japan Trekなる在校生の修学旅行の主催者として、100人の学生の前でプレゼンテーションをしました。渡米前だったら考えられもしなかったことですが、やればできるようになるもんです。こうしたことの積み重ねが将来のリーダーシップを増してくれるものと勝手に期待して、引き続き逃げずにいきたいと思います。

November 19, 2010

食べもの、酒、冗談、下ネタ

最近の雑感。整理できてないけど書きなぐってみます。

はっきりいって、英語は全く上達しないし、周りは若くして天才、毎日自分の効率の悪さを感じる日々です。いくらやっても追いつかないのに、それでも追いつく努力をさぼる、というのは怠惰な人間の性ですかね。レコード屋を見ると必ず入るとかいう時間はあるくせに、勉強にはなかなか気持ちが向かない。たぶんこれが最後の勉強する時間だし、この時間を有効に使わねばとは思うのだけれど、やりたくないものは仕方ない。

それをうまい言葉でいえば、24時間を優先順位付けをしているということにもなるらしいです。外国で大学院で2年間過ごす、というとやりたいことは多すぎて、とても全部はできない。学問か、海外経験か、まずはそこで大きく2つの分岐点があって、自分は海外経験を取ってると思うのだけれど、例えば外国人との会話をとっても、もともとそんなに社交が得意なわけでもないし、そのへんも人格改造している最中です。

昨日今日と別の外国人と食事をし、そのまま彼らをマンツーマンで自宅に招きました。彼ら(特にアメリカ人)のコミュニケーションスタイルは、表面的にはナイスガイでもなかなか懐に入ることが難しいことがわかってきていますが、そしてそれはアメリカ人同士の際でも同様で、彼らにとっても悩みの種らしいですが、個人ベースで家に招きいれたことは今週の成果じゃないかと思っています。つたないコミュニケーションを支えるのは、いつでも食べもの、酒と冗談、下ネタですね。これだけは国境を越えることがわかりました。

そうやってひとつひとつ目の前のことを壊してやろうと思って努力していますが、ふと周りを見回すと学校内でも同じ人種で固まっているのが見えたりします。私ももちろん日本人の同級生といるのは日本語も使えるし機微もわかるしあまりに快適なんだけど、それと同じことが各所で起きているというのが現状です。

じゃあそれでいいのかというと、やっぱりそんなことはなくて、それを個人レベルでぶっ壊そうというのが今の気持ちです。なるべく落ち着かないところに体を置き、なんとかブレークスルーしようと思ってる。ネイティブの英語は早すぎて聞こえないからとりわけつらいんだけど、それでもそこに攻めていって、すでに出来上がりつつあるコミュニティの中で話の通じない東洋人が紛れ込んできたみたいな冷たい空気を感じながら、なんとか居場所を確保しようとしています。そこでも役立つのは、やはりジョークです。すげえおかしなことを言えば、それで認めてもらえる。不思議なものです。今最注力しているのはそういうわけでアメリカンジョークです。いいネタがあったら教えてください。

先日は同級生が集まるバーで、チリ人と、僕らはもっと(アメリカ人に対して)アグレッシブにならなければいけないという話をしました。実際の話、この2年間はとても貴重な期間で、学校という環境を借りなければアメリカ人とこんなにコミュニケーションできる機会はないと、そのチリ人は言います。それなのに、周りのチリ人はみんな仲間内で固まり外に出ようとしない。恥ずかしながら自分もその傾向は否定できない。現実として、その誰でも来れるバーに、外国人はあまり来ない。まあ毎日課題もあって死ぬほど忙しいし、来たって言葉もあるしつらい思いするだけだから、それもそうなんだけど、でもそのチリ人はそんな中で確実にアメリカ人の中での居場所を確立してる。

自分の性質上、別に今までの学校生活の中で目立ったことなんて一度もないし、みんなの人気者ってのとも違うし、そんな奴がいきなりアメリカ人の学校の中でスタンドアウトしようと思ってもできることには限りがあるわけです。そんな現状を認識した上で、それでもなんとか多数派であるアメリカ人集団の中に食い込まなければならない。この辺を今のモチベーションにしています。ここまで来るとMBAでもなんでもないですね。ただの個人的な落とし前をつけたいだけかもしれない。外人コンプレックス。でも、これを克服することがもし将来海外の相手と仕事をするときには、一番役に立つ自信につながるのではないかと感じています。

November 17, 2010

挑戦を賞賛する文化

MITのカルチャーについて、実際に身を置くようになって感じること。

まず、よく言われるとおりInnovativeであることはとても感じます。考えるより「とりあえずやる」という姿勢をとても評価してくれます。行動することで具体的な結果が出ますし、フィードバックループを繰り返していくことで成長できます。私もEntrepreneurship & Innovation Trackという選択科目を履修しクラスメイトの前でビジネスプランを発表したり、Sloan Entrepreneurship for International DevelopmentというStudent clubに入りTanzaniaにInnovation Centerというインキュベーション組織を立ち上げたりしています。Boston Areaは、エスタブリッシュトな企業があるだけでなく、シリコンバレーに次いで全米第2の起業集積地帯でもあり、そうした環境で起業家、ベンチャーキャピタル、エンジェルの話が聞けたり一緒に働けたりすることは他校にないメリットと思います。

またこれも教科書的なことですが、Minds and Hands(なんか正式なラテン語があった気がしますが)の精神があることはとてもファンダメンタルな部分で効いてきます。MITは少し年齢層が高いので、実務経験に基づいた議論ができることはメリットと感じました。また各校理論と実践の両方をやると謳ってはいますが、実践の機会の程度には実は大きな差があります。例えば海外のコンサルプロジェクトは他校ではかなり競争率が激しいと聞きますが、MITは学生の半分以上が登録します(特に行きたくないという人はそもそも申し込まないので、実際は希望すればほぼ行けるようです)。

加えて、Data-drivenなカルチャーだということをある教授が言ってました。定量的、あるいは定性的でもよいのですが、事実に基づいた意思決定、それがカリキュラムにも息づいていると感じます。DMDという科目が1年生のコアに入っているのですが、一般的なStatisticsの授業に比べ、はるかに経営マターに直結する形でデータを扱うやり方を学んでいると感じました。「とりあえずやる」の縁の下を支える“ノリ”でない意思決定、これは大事だと思います。

最後に、人はとてもWarmでさらにHumbleだと感じます。アメリカ人になかなか入り込めない、とはキャリアフォーラムで再会したときに各校の人が言っていたことですが、MITはこちらが突っ込んでいけばアメリカ人が聞く耳を持ちます。こちらが英語ができなかろうと、熱い話を持ちかけてきて盛り上がります。第2言語で戦っているのはすごいことだ、とRespectを示してくれます。各人がHumbleであるからこそ、他人をRespectする文化が生まれるのだと思います。

何かに取り組もうとする姿勢を個人レベルで賞賛すること、それがInnovationを生むMITのカルチャーなのだと思います。