2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

October 23, 2011

Sloanについてよく聞かれること

そろそろファーストの出願が進み、セカンドもエッセイ本番でいよいよというところだと思います。MIT Sloanに関心を寄せていただいている皆様に、よく質問されることをいくつかまとめてみます。

特にアントレプレナーシップ、アクションラーニングについては受験生の方々の関心が高いようです。実際にこちらに来てみて、Sloanは-Labと呼ばれるアクションラーニングが大変に充実していると感じます。Labの授業は好きなだけ取れます。といってもワークロードが重いので、1学期に1つが適量、最高で2つだと思いますが。そうした実践系の授業に加え、それ以外のほぼどんな授業でもExerciseのアサインメントがあり、実際に手を動かす経験をするのは特徴的だと思います。

一連のアクションラーニングの中でも看板授業であるG-labは2年生オンリーの授業で、学年の約3分の1の学生が選択します。私もちょうど現在受講中です。アメリカ人、イギリス人、チリ人と私の4人でチームを組んで、インドネシアのIT企業(オンラインペイメント)にコンサルテーションをします。文化、政治、経済の成熟具合を踏まえた事業開発ということで、秋学期はDeveloping countryにおけるビジネスの授業・ケースを扱いながら、チームとして国に関するリサーチやクライアント企業の現状把握をしています。その後、1月に3週間現地に行ってコンサルティングを実施します。給与はもらいませんが、飛行機代、宿泊費は全て企業持ちということで、本気度の高いプロジェクトです。G-labの学びは、仕事ではなかなか立ち入らない社会制度や政治の話が含まれること、そして途上国におけるアントレプレナーシップの役割・倫理をアカデミックに体系化した上で、実際のプロジェクトでインパクトを与えるという総合的な体験であることです。チームごとにメンターがつき、ストラテジー、マーケティング、ファンディングなどのプロジェクトタイプに合わせて専門家の話を聞けるなど、リソースも豊富です。

そのほか、アントレプレナーシップ関連では、E-labという授業でボストンのインターネットサービスプロバイダーの顧客開拓を支援しました。この授業のよい点は、教授陣はもちろんのこと、MITにはEntrepreneurship Centerという組織があり、そこのResident(つまり起業家やリサーチャー)にプロジェクトの相談をし、フィードバックをもらいながら進めることです。またチーム間での進捗共有による助け合いも行われます。この技術であれば誰に聞け、とか、プライシングのプロジェクトならこんなツールを使ったのでシェアする、とかいった具合です。クライアント企業の知らないことを、カスタマーの声を聞くことであぶり出し、そこから価値のある提言をする、というプロジェクトの進め方について、教授から徹底的に指導・サポートを受けることで、顧客を次のステップへ動かす方法を体を使って学びます。ボストン市内の企業へのアポなしインタビュー、電話インタビューなど、なかなか普段体験することのない活動を通じて、生の情報を集めていったのは、私自身大きな学びでした。

一歩引いた視点からのInnovationという意味では、Distuptive Technologyという授業があり、Innovation研究大家のJames Utterback教授が、新しい技術がどう社会にイノベーションをもたらすか、その要因は何かを体系化していきます。同授業ではチームプロジェクトも含まれ、現代の新技術がどうイノベーションをもたらすか、その可能性を検証し、レポートにまとめます。技術だけでなく、どのようにビジネス全体をデザインするか、既存プレイヤーが技術改善を図り対抗してくることに、どのように対処するかといった競争環境・時間軸を含めた視点を持つことで、イノベーションの理解に深みを持たせることができます。

あとはNew Enterprisesという授業では、3人のチームで、4ヶ月かけてビジネスプランを書き上げ、ベンチャーキャピタリストにプレゼンするという経験をしました。その他には例えばEntrepreneurial Financeという授業もあり、こちらはファイナンスサイドからアントレプレナーシップを見る、つまりスタートアップ企業の企業価値をどう評価し、投資していくかということを学びます。こうした環境で、アントレプレナーシップ全体がどう成り立っているかを掴むことができ、その中で自分がどんなロールを担うかを考えることができます。

校風についてもご質問をいただくことが多いです。Sloanはお互いを尊敬する、非常に協調的でMatureな校風と感じます。友人の一人は、それをわびさびがわかると評しています。その学校の協調的な雰囲気は、もちろんもともと協調的な性格を持つ学生を取ることが背景にあると考えられますが、そうした学生を合格させるということのほかに、チームで課題をやらされるというしくみに基づくものも大きいと思います。基本的に全ての授業はチームを組みます。コアセメスターは7名程度のチームがアサインされ、その後は授業ごとに3~4名のチームを自分たちで組んで、チーム課題をやります。評価はチームで提出するレポートに対してつけられるので、必然的にチームワークをするようになります。もちろんライティングなどIndividualの課題もありますが、それでもかなりの割合がチームもので、毎週複数回ミーティングをすることになります。毎回のチーム組成の仕方、各人の長所を活かした貢献の仕方、それぞれの都合で時間が取れない時の助け合い方など、このチーム作業から学ぶことは大きいです。

クラスへの貢献の方法についても、よく質問をいただきます。もちろんExceptionalな経験があればそれをシェアすることは評価されますが、そこまで気負わずとも、授業中に意見をビルドオンしていくこと自体が大切です。クラスは一方通行ではなく、皆で作り上げていくもので、毎回の予習と発言はきちんと評価されます。そのほかの貢献の形としては、コミュニティを盛り上げる、というのがあると思います。我々日本人学生は、震災後にファンドレイジングの手段としてStand with Japanという活動を立ち上げ、Tシャツを販売し、チャリティパーティを企画しました。その活動を皆がサポートしてくれることで、副次効果として学校のコミュニティが強まったと感じます。周りに何かを働きかけていく活動はここではとても評価されます。

Sloanについて、今回は私が質問を受ける点を中心に書いてみましたが、更に全体像をお知りになりたい場合には、各種情報が以下のサイトにありますのでぜひご覧ください。
http://web.mit.edu/sloanjapan/101/index.html

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