2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

March 22, 2013

The world is flat or not

世界はフラットか?

漠然とグローバルと思い、ここまでやってきて、ようやく見えてきたことがある。英語でビジネスをするというファンダメンタルな部分はグローバルビジネス全般に思い描いていたことと変わらないのだが、その中身は、当たり前ながら一言にグローバルでは括れないのだなということ。これまで実際に経験してきた日本式のやり方と、MBAで学んだアメリカ式のやり方と、それを相対化することで見えてくるものは多くあったが、それだけでは世界中でカバーできる範囲はまだまだ限られているのだなということ。グローバル、アメリカの外は広かった。

例えば実際にイタリアとインドで働いてみて腹に落ちてくるのは、キャリアをヨーロッパで積むというのと、アジアで積むというのだけでも全く違うということ。乱暴な一般化であることは承知した上で、自分なりの理解を書きたい。これはもちろん消費財を売るのか、自分の業界のようにITをBtoBで売るのかによっても大きく変わるのだろうが、とりあえず自分の経験範囲ということでITの話を。

ヨーロッパは成熟市場であり、もちろん国により違いはあるものの、まだまだローカル市場の色彩が強い。効率化の余地はそこかしこにあるが、規制慣習文化によりなかなかそれが進まない。外からは入り込めていないし、逆に言えばヨーロッパは業界のベストプラクティスについていけていない。オフショアひとつとっても、ちっとも進まない。それは雇用に関する規制であったり、心理的な国内志向だったり、なんとなく自国で完結しようという雰囲気がある。市場統合も、濃淡はあるが全体としてはまだまだ進んでおらず、国によっては半分鎖国のように見えるところすらある。ローカル企業がまだまだ幅を利かせている。

伝統を重んじ変化に対して必ずしも迅速に反応しない、時には抵抗する人たちに、よそ者として人種の壁を越えて入り込み、一人称で能力を認められて初めて仕事ができる。仕事だけでなく歴史・文化理解も必要だし、根気強く物事を動かしていく辛抱強さも必要。地に足をつけ、じっくりと仕事をしていかねばならない。

一方で、アジアの専門家になるというのは、どちらかというと起業家的なスタイルが求められる。リスクを取ってビジネスを成長させていく。失敗する案件もたくさんあるだろうが、いくつかディスプロポーショナルな利益をもたらすものを得られれば成功。いろいろなことが整備されておらず、ビジネスの成熟度も低い中で、それを受容し、泳いでいくこと。不確実性を許容しどんどんドライブしていくことが求められる。

また、特にパブリックビジネスでは、清濁併せ飲み、潜り抜けていく根性が必要。国家主導型の大型プロジェクトは多いが、それにどう関わるか。ビジネス倫理を保ちつつ、現地ビジネスのやり方に倣わねばならない。Corruptionに巻き込まれる恐れは常にあるし、単純にナイーブになっても仕事はできない。明確な答えはない。新興国マーケット戦略は学校のケースでも多く学び、G-labでも体験したが、卒業後も実務で経験を重ねる中で、よりイメージがクリアになってきた。

どちらにも共通すること。言語の壁は大きい。イタリアではイタリア語、スペインではスペイン語、英語が公用語のインドだって、ヒンズー語ができないとビジネスは成り立たないというのを実際に体験した。もちろん通常のコミュニケーションは英語で行われるのだけれど、細かいところを調整、隙間を埋めていく作業は現地語で行われる。したがって、ふつうの日本人が日本の外でビジネスをやろうと思ったら、ローカル人材との協働が必須。英語だけでは完結しない、ローカル人材なしには成立しないビジネスの世界は、アメリカの外に広大に広がっていた。

情報通信技術に後押しされ、世界はもちろん急速にフラットになってきているのだろうが、虫眼鏡で見ればでこぼこだらけ。自分自身も一絡げにグローバル、ではなく、少なくともどの地域で、というのを選んでいかなけらばならない。

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