2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

January 24, 2011

目標感の再認識

先週、某コンサルティングファームのインタビューで、自分について深掘りして話す機会があり、そこでなぜ自分がMBAを取りたいと思ったか、改めて目標感を確認することができた。

強烈なイメージとして残っているのは、2009年秋に世界展開を進める日系小売企業の役員とお会いした時のこと。我々はどんどん外に出て行くが、その時に組む相手は世界について知っている会社。一緒に勉強させてください、では心許なくて組めない。これを聞いたときには、やったことがないからできない、やれないから経験が貯まっていかない、結果どんどん世界から取り残されてしまう、という負のスパイラルに入り始めていることに心底あせりを感じた。そして、それを個人レベルで打破するための方策として、MBAへの決意を強くした。

そして直接的なWhy MBA?となっているのが、昨今のIT業界におけるグローバルレベルでのアライアンス推進。私のいた組織でも、海外M&A案件はどんどん増えている。同僚によれば、各国の対象企業とテレフォン・カンファレンスが日常的に行われ、英語や中国語で交渉する機会がよくあるようだ。昨今ITのビジネス環境は急速に変化している。

もちろん、これが直に、今後はどんどんグローバル案件に従事できる!というほどオポチュニティに溢れているわけではないことは承知している。IT企業の本業は当然のことながらアライアンスではなくアプリケーションの製造販売である。M&Aはあくまでも戦略を実現するひとつの手段であり、しかも飛び道具。

ただし、その機会があった際にそこに入り込めるようにReadyの状態を作っておくことはとても大切。実際に、もといた組織では、現在は英語や中国語ができるメンバーが海外案件を担い、そうでないメンバーは日本国内の案件に携わる、と明確に線引きされているそう。市場に変化があった地点から、じゃあ担当者であるあなたは、ベルリッツでも行ってスキルアップしてきてね、なんてことには決してならない。他にできる人がいたら、その人に国際案件が割り当てられる。

いくらM&Aの経験を国内で積んでいても、そもそも語学ができなかったら海外で交渉ができない。だから、少しくらいM&Aの経験がなくとも語学ができる人材が抜擢される。M&Aは、やりながら学んでね、わからないことがあったら周りに訊いてね、という具合だ。それくらい、語学および海外ビジネス経験は必須のスキルで、当該組織の国際M&A業務に関して言えばいわばノックダウンポイントになっている。経験に裏打ちされたスキルがないと、チャンスすら与えられないというのは、なんとも厳しい状況である。しかし逆に言えば、そのスキル経験を持っていれば、抜擢される可能性が高まるということであり、そして留学はそれを増す絶好の機会だ。

「どうやったら今後グローバルに働ける環境に身を置けるか」というのは、今の私にとって、キャリアを考える際の大きな問いになっている。それをブレイクダウンすると、ひとつは、自分自身のスキルとして、国際環境におけるコミュニケーション能力をどう劇的に高められるかである。これは答えの方向性はクリアーで、そのための筋力トレーニングを積む必要がある。プロジェクトやリーダーシップポジションなど、実際に体を動かす経験を通じ、積極的に取りに行かねばならない。

そしてもうひとつは、どこにグローバルビジネスに携われるオポチュニティを見出すか、ということである。これはなかなか難しい。一昔前は、企業派遣ではMBAを取ってもその後それを活かす仕事に恵まれず、企業個人ともに不本意な結果に終わることも少なくなかったと聞く。ここで仮に、MBA後に活かすべきアセットがマネジメント知識・スキルとグローバルコミュニケーション能力であると乱暴に整理したとする。この場合、高レベルのマネジメントに携わりたいという場合はともかくとして、グローバル業務に限って言えば、これまではそうした機会が日本国内にそう多くなかったというのが実情であろう。

しかし、その状況は大きく変わりつつあると思う。先述の小売企業もそうだが、いまや多くの日系企業が本気でグローバル進出を進めている。同時に国内にもかつてないほど外国企業が入ってきて競争をしている。ITの世界でも、顧客企業の国際展開に対応するのが求められるのはもちろんのこと、例えば韓国企業は日本の官庁案件にも入札しているし、日本のIT企業もアプリケーションの製造では中国やインドにオフショアするのは当然のことになっている。

IT業界に限らず、好むと好まざるとに関わらず、これからのビジネス環境は必然的にグローバル化する。そうした国際競争の中で日本企業がどう戦っていくか、大きなグローバル化の流れに対し、どのレベルで関わるか。それを見定め、決定していかなければならない。私のキャリアにおけるモチベーションとして、「世界に通用する強い日本企業をつくりたい、そのために自分ができることで貢献していきたい」というのがある。残念なことに、私は強い日本を知らない。高校生の時にはバブルが崩壊し、大学時代に日本経済の縮小を見て、就職氷河期と呼ばれる時期に就職した。

今ビジネススクールで学んでいても、日本企業あるいは日本という国のプレゼンスは極めて低いと感じる。授業ではまだ日本企業のケースは見ていないし、クラスメイトの日本、少なくとも日本企業に対する興味もさほど高くない。Japan Trekというクラスメイトの日本へのスタディツアーを企画するために話をしていても、本当に、彼らの口から出てくる企業名はトヨタ、任天堂くらいのものだ。もちろんそれらの従来から言われる超一流日本企業はビジョナリーで日本が世界に誇れる企業だが、一方で、いつまで日本=トヨタなのか、もういいかげんその状況が変わってもよさそうなものだとも思う。

私は、もう一度強い日本をつくりたい。世界に打って出て、勝っていける企業を増やしたい。そしてそのための地力は十分にあると確信している。私の派遣元である企業も、海外展開に大きくシフトしている。したがって、MBA後のキャリアとしては、自らが事業会社に身を置き、その戦略を推進するというのは、当然に考えられるオプションだ。そして他のオプションとしては、(例えばコンサルタントとしての立場から)海外に出て行ける日本企業を何社も作ることだ。これはレバレッジが効くアイディアなので、別の観点から魅力的だ。

自分の興味の方向性、スキル能力、性格特性を鑑みた際に、どういうやり方が一番インパクトを与えられるか、具体的な関わり方については引き続き考えていこうと思うが、留学して半年たった今の時点で、早くも忘れかけていた当初の想いを、図らずもインタビューで言葉をつなぐ中で、生々しい形で再認識できたことは大きな収穫だった。

No comments: