2010-2012年、MIT Sloan MBAプログラムに留学していました。アカデミックな話題から、ボストン生活、趣味まで、日々感じることを書いています。

March 18, 2010

Why MBA?のつくりかた

「それで、なんでMBAなの」究極の直球、Why MBA?。今回はエッセイ編。

最初は戸惑う。極端な話どうとでも答えられるので、どこに焦点を置いたらよいのかよくわからない。Whyに「~であるから」と理由で答えるとすると、「今の○○に限界を感じているから」でも、「将来○○がしたいから」でもいい気がする。ただ、それらはMBA受験の世界では、それぞれキャリアデベロップメントとキャリアゴールと位置付けられる。狭義のWhy MBA?は、「MBAプログラムで何を得たいか」について書くことになる(広義のWhy MBA?はキャリアゴールまでを含む)。

とはいえどう書けば説得力を持たせられるのかと不安になるが、恐れることは何もない。堅固なキャリアゴールが完成すれば、そのゴールを達成するために必要な具体的スキルが自然と特定できる。この将来のゴールとの関連の強さが、Why MBA?で求められるものの全てである。

ちなみに考えてみれば当然のことだが、キャリアゴールに至るための手段はMBAの他にも無数にある。インターナショナルビジネスがやりたいのならば、自社の海外オフィスに異動してもよいし、外資系企業に転職してもよい。コンサルタントになるための知識を体系化したいのならば、戦略やらマーケティングやら、一式本を読めばいい、ということになる。こうした想定される反論を、一つずつつぶしていくのが、Why MBA?構築のプロセスである。

もちろん現実問題としては、どんなケースでも、MBAが絶対に必要、ということはないだろう。2年間現場から離れる、というデメリットもある。しかし、何かを成し遂げるために、その手段を比較検討した結果、「自分にとって」ベストのオプションであると結論するに至った、という結果とその理由、思考の深さをアドミッションは聞きたがっている。なぜMBA?か、問いと反問の繰り返しは、自分自身が、実はロジカルではないところで、何をMBAに求めているかを再認識するのにも、きっと役立つ。そしてそれは、往々にして理屈を超えたところにあるものであるが故に、突出した強さを持つ(対学校ではロジカルさ、リーズナブルさを求められるので、直接使える機会は少ないかもしれないが)。

繰り返しになるが、Why MBA?は、過去の積上げの延長にあることはもちろんだが、むしろ将来からの逆引きと強く結び付いていることが大切である。明確なキャリアゴールを示し、幾多あるオプションの中で、MBAでなければならない理由は何かについて整理する。そして、○○をやりたいから、○○を学ぶ、を述べていく。その理由が具体的であればあるほど、手触り感を持って必要性が伝わる。

そしてそれに、その学校ならではの要素を入れることが、Why this school?になる。ここは個別リサーチとカスタマイズにより、特に取りたい授業とか、環境とか立地、出会った卒業生・在校生から学んだことを盛り込むといい。一見すると、どこの学校も同じことを言っているように見える。MBAというパッケージを販売しているのだから、当然と言えば当然だ。ただ、本当に大切なことはHPやブローシャーに載っているとは限らない。公知情報を調べ倒した後は、人に会って生の情報を取る。この作業には思いのほか時間がかかるが、その分得られるものも大きい。

しかしながら、学校の独自性が理解できただけでは、他の受験生と何の差異化にもならないことには注意が必要である。例えば、ある学校のコミュニティがどれほどダイバースで、あなたがそれをいかによく知っていても、それは学校がすごいだけであって、あなたを入学させる理由にはなりえない(し、あなたにエッセイで書いてもらわなくとも、学校は自校の強みを知っている)。したがって、学校をリサーチして強み・魅力を見つけたならば、なぜそれが自分にとって意味があるのかを書かねばならない。そうすると、やはり、最も重要なのはキャリアゴールであることがわかるはずだ。キャリアゴールと学校の強みの関連性が伝われば、説得力が大幅に増す。
  • IT企業での事業開発とM&Aの経験から、将来は自社のグローバルビジネスを、クリーンテック分野でM&Aをてこにして推進したい
  • 業務上必要なファイナンス分野では、Sloanは超一流の教授陣が揃っており、事業開発を学ぶためのアントレ・イノベーション分野でも全米屈指
  • 加えて自分の将来の活動フィールドを踏まえた際に、ITとエネルギーを結び付けた研究領域ではMITは随一の存在
  • それらを理論と実践の両輪を回しながら、価値観を共有できる仲間と学べるのは自分にとって理想的な環境である
これは、IT企業でM&Aをやってきた自分だからこそのWhy MBA?およびWhy this school?であり、バックグラウンドが異なる誰かがそのままコピーしようと思っても機能しないステートメントだと思う。また、金融だけなら東海岸のほかのいくつかの学校でもいいだろうが、それにアントレ、IT、エネルギーと加わることで、他の学校ではなくMITだと説得できる強度を持った内容になる。

「なぜ、”あなた”はMBAを目指すのか」、最後は、自分だけにしか答えられない、他の誰とも交換不能な理由になっている、それが完成度の目安。

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